"空想の世界"がもたらす子どもたちへの効果
我が子が、何かになりきったり現実とはかけ離れた世界のことをお話ししたりと、空想の世界を楽しんでいる姿を見たことはありませんか? ママたちは一見、この子大丈夫かしら?と心配になる事もあるかもしれませんが、実は、空想には様々な力をつけてくれる効果があるのです。 今回は、年齢別の空想の違いや、空想と現実の区別の捉え方など、事例を用いてご紹介します。 ■空想とはなにか?
空想とは、一般的に「現実にはあり得ない事、現実とは何ら関係のない事を、頭の中だけであれこれと思いめぐらすこと」と記されています。 では、この空想を行うことで幼児が身につく能力としては、どのような種類があるのでしょうか。 <空想力で身につく力> ・ごっこ遊び・なりきり遊びで悪者などを倒すこと⇒「自信」・「自己肯定感」 ・絵本の世界に入り込むこと⇒「想像力」 ・空想上で様々なタイプの人を演じること⇒「コミュニケーション能力」・「思いやり」 ・空想上のストーリーを話す⇒「思考力」・「プレゼンスキル」 空想の遊びは様々ありますが、遊び方によって様々な人間力を身につけることが出来ます。
■空想の世界を楽しむ
幼児の心理 次に、年齢別の空想の捉え方の違いについて、事例を用いてご紹介します。
<背景:大人が砂をハンバーグに見立てている>
・2歳児:なんの疑いもなく自分も口へ運んでしまう。
・3歳児:大人が食べようとする仕草を見せると、時に驚いた表情を見せる。 驚いた後、真顔で「おいしい?」と尋ねるなど、その驚きの事実をまだ捉え切れていない。
・4歳児:「食べたら病気になるよ~」など、真に受け止めた大人に対して非難する。
・5歳児:驚いた後、逆に「ぼくも食べれるよ~」などと、大人をからかい楽しむ。 この成長段階の流れから、幼児は現実性を疑う一方、不思議さや奇妙さに対して好奇心や探求心を働かせ、その世界を楽しむことができるようになってくると言えるでしょう。
■空想と現実の区別
次に、空想と現実の区別は何歳ころに身についてくるのかを実験した事例をご紹介します。
事例①
絵本の中の出来事について
<内容> 園児に絵本の中の「空想上の出来事12枚・現実の出来事8枚」の絵を見せ、 「本当に起こること」と思ったら〇、 「夢の中や絵本の世界でしか起こらないこと」と思ったら✖を指差す。
<材料として使用した「空想上の出来事・現実の出来事」の一例>
「空想上の出来事」
・擬人的動物:ブタが服を着て生活している。
・架空生物 :怪獣が子どもと遊んでいる。
・魔術的人物:人間が空を飛んでいる。 「現実の出来事」
・普通の人間:子どもが服を着替えている。
・普通の動物:ロバが草を食べている。
年齢別及び種類別の正答得点の平均値
<結果>
上のグラフからも分かる通り、空想と現実の区別の正答得点の平均値は、5歳児が一番高いことが分かります。
また、空想上の出来事の中の「擬人的動物(白グラフ)」と「魔術的人物(黒グラフ)」を比較すると、平均値に大きな差がありました。(擬人的動物:魔術的人物=2.51:2.95) これは、同じ空想上の出来事でも、擬人的動物は 「より現実に起こり得る」、魔術的人物は「より現実に起こり得ない」と判断されているということです。
これは、子どもにとって異種である動物よりも、同種である人間の方がより身近で、正しい推論を導きやすかったと考えられます。
この事例から、幼児期の初めに曖昧で不安定であった空想と現実との区別の認識は、「幼児期の終わりまでには安定的になる可能性が高い」ことが明らかになりました。
事例② 将来の夢の実現可能性について <内容> 園児に対して、
- 「大人になったら何になりたいと思っているかな?」と質問し、「現実的な夢」と「空想的な夢」とに分類。表には「空想的な夢」とその出現頻度も記載。
- 「大人になったら魔女になりたいって言っている子がいるんだけど、なれると思う?」と質問し、「なれる」「なれない」「分からない」の3つに分類し、出現頻度も記載。
空想的な夢と「魔女になれる」発言の出現頻度の年齢別比較 注:数値は人数を示す
<結果>
事例①の将来の夢については、3歳児、4歳児では空想的な夢が多い結果となりました。
中でも3歳児のみには、「イヌ」「バナナ」などの動植物、また「空をすべる人」「お菓子を集めて食べる人」など非現実的な職種が含まれていました。
また、事例②の質問に対して、「魔女にはなれない」と回答した3歳児、4歳児は0名であったのに対して、5歳児は13名と年齢による違いが顕著に表れました。(赤線の数値) これらのことから、5歳児になるにつれて、空想と現実との区別を徐々に確立し、強固なものにしていくことが確認できます。
■まとめ
子どもの成長過程において重要な役割を果たす遊び。
その中の一つである「空想力」は、幼児期特有の能力ではありますが、現実との区別を幼児期の終わりまでには徐々に確立していきます。
空想は、自分の世界を広げ、自己を見つめ直す良い機会であり、そして不確実性の高い未来を生き抜くために必要な、自信や想像力、コミュニケーション力などといった非認知能力を育んでくれるのです。
そのため、大人は子どもが楽しんでいる空想を大事に見守りながら、思う存分発揮できる環境を整えてあげ、そして、空想に対する位置づけや意味をしっかりと理解しておく必要があると言えるでしょう。
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参考文献
幼児期における空想世界に対する認識の発達
repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/15583/1/富田昌平_本文.pdf
参考サイト
情緒面の発達に大きく影響!「空想力」で身につく4つの力
https://woman.excite.co.jp/article/child/rid_KodomoManabiLabo_39772/
子育ての味方!
http://kosomika.com/praise-omnipoty/
赤ちゃんから始まるごっこ遊び!子どもに与える影響と親の関わり方
https://teniteo.jp/c01/m001/PuX3h
空想は脳に良い効果をもたらす!? という研究結果
https://www.lifehacker.jp/2012/04/120323-daydreaming.html